Fate/Zero 第十九話「正義の在処」 感想!
正義の在処は一体どこなのでしょう。
師匠殺し
親殺しの次は、師匠殺し。
母親のような師匠だったナタリア。
いやぁ切嗣さんは壮絶な人生を送りすぎです。失う人生ではなく、自ら切り捨てていく人生であるところがもうね。失ったのなら、それを他人のせいにすることができるので怒りの矛先がありますが、自分で切り捨てちゃっているから周りのせいにすることができない。だから泣くしかない。
切嗣がクルーザーを出した時は「あれ? また場面が変わった?」と思ったものですが、蜂の処分の用意ができていると言った時点で気付いてしまいました。視聴者のほとんどがこの時点で気付いたんじゃないでしょうか。ここで気付けなくても、死亡フラグ以外の何物でもない会話を始めたらまぁ気付きますよね。
また、ナタリアの方も気付いていたのでしょう。ナタリアは「自分の命を最優先にする」という信条を掲げている以上、切嗣が飛行機を撃墜する気だと気付いてからも、自分が助かる選択しか取ることができなかった。
切嗣がバズーカを構えるところの絵作りはすごかったですね。こういうところで効果的にカメラを回すから物語がより盛り上がる。クルーザーに群がるカモメの群れが、大好きな人を殺すなんて悲しいことしないで、と切嗣に語りかけているようでした。
切嗣の男泣きにはもらい泣きをしてしまいましたよ。切嗣がランサー組を徹底的に叩きのめした時は万言を尽くして切嗣の悪行ぶりを罵りましたが、今回は完全に感情移入。いやぁ我ながら作り手にあっさり騙されるいい視聴者です。ここで僕は考えてしまうのですよ、もし僕だったらどうだろう、師匠を殺せるだろうか。大勢の見知らぬ命と一人の大事な命を天秤にかけて、自らの意思で選択を下せるのだろうかと。
切嗣は強い男ですね。
考えてみれば切嗣は、このあと最愛の妻を失うことがほぼ確定しているのですよね。なんてことだ。
そういや、綺礼も師匠殺しをしているのでした。先人はいい言葉を遺してくれましたね。月とすっぽん。
正義の在処
さて、正義とはどう定義すればいいのでしょう。
前期に放送されていた『偽物語』がちょうど正義について取り扱っていたので、感想ブログ界隈でもあちこちで正義について語る記事を見ました。僕も自分の記事で少しばかり書いた記憶があります。ですが本腰入れて書いてはいなかったと思うので、いい機会なので今書いてみようと思います。
「正義の味方」と聞いて、みなさんはまず何を連想するでしょうか。それぞれ差異はあるでしょうが、たとえば戦隊シリーズだとか、ウルトラマンだとか、そういう勧善懲悪な子ども向けのヒーロー作品をとりあえず連想する方が多いんじゃないかと思います。僕なんかはひねくれているので『鉄のラインバレル』とか言い出すのですが、まぁそれは置いといて。
彼らは正義の味方と呼ばれるヒーローの普段していることを簡単に整理すると、「罪なき人々を苦しめる悪を成敗し、人々を助ける」となると思います。
勧善懲悪ストーリーはたいてい子ども向けなので、こういう物語では「人々を助ける」という側面がとにかく強調されますね。そこで親なんかは、「困っている人を助けられるいい大人になりなさい」とか教育するわけです。
これが悪いとはまったく思いませんが、これは非常に一面的な考え方だと言えます。
人々を助けるために、ヒーローたちは何をしているか。悪を成敗していますね。
正義とは、本来どこにあるのでしょうか。悪を成敗するのが正義なのか、人々を助けるのが正義なのか。
これは多面的な問題で、つまりこれは「どちらでもある」と言えるのだと僕は思っています。悪を成敗したら人々が助かったのか、人々を助けた結果悪を成敗したことになるのか。卵が先か、鶏が先か。
つまり、正義を問うそれぞれがどちらに重点を置くかだと思うんです。
ヒーローものは後者と見せかけて前者ですね。これは楽です。だって悪は悪いのだから、成敗しちゃっていいじゃない。その結果人々が助かるなんてもうけもの。ちなみにこの場合、人々が助からなくても別にいいのです。いやもちろん犠牲になったら駄目だけど、そもそも罪なき人々が関わらない場合も存在するのがこのパターン。ヒーローたちの戦う動機は、「罪なき人々を助けたい!」ではなく「悪いことするあいつらが許せない!」なのですから。
しかし切嗣は、後者のように考えてしまった。
人々を助けないといけない。その結果、人々を苦しめる悪が成敗される。
悪が消えてくれるうちはこれでもいいのですが、この場合、人々を苦しめるのが悪ばかりだとは限らないわけです。
今回がまさにそう。多くの人々を助ける結果を導き出すためには、ナタリアの存在がどうしても邪魔になった。
前者のように考えられたら楽でしたでしょう。だってすでにボルザークは殺したのですから、あとはナタリアさえ帰還すればそれでよかった。蜂の処理は、聖堂教会なり魔術協会なりに任せればよかった。まぁ犠牲者は当然増えたでしょうけど。
同じ正義でも、見る面を変えるだけでこんなにも違う。ヒロシの名言にありますね、正義の反対は悪じゃない、また別の正義だ。
切嗣は優しすぎた。だから苦しい方の考え方をしてしまった。
だから切嗣はこう考えるようになったのでしょう。ナタリアを殺さなければならない正義なんてクソ食らえだ。
今の切嗣は、紛れもない正義を背負いながらその正義を否定する人生を送っています。悲しすぎる。
これはセイバーと馬が合わないはずだと、納得したお話でした。
さて次回は本編へと戻ってきますね。2話も尺を取って主人公の過去を掘り下げる虚淵的シナリオ戦術、きっと効果的に作用してくることでしょう。
次回予告では気になるセリフばかりでしたが、とりあえず気にするべきは、「次は誰が脱落するのかな」ですかねw
つぶやき
実は今精神的にすっげぇボロボロな私。半分くらいは自分で追い込んだようなものですが、もう半分のたちが悪い。今まで仲よくさせてもらっていたある家族が全員クズだったというどうしようもない事態。
世の中にはびっくりするくらいのクズがいるんだという社会勉強だと思ってはいますが、それが目と鼻の先にいたとなれば気持ちの整理がつかないよね。アニメだけが救いだよほんと。


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