Fate/Zero 第二十四話「最後の令呪」 感想!
切嗣の選択。
世界の救済
綺礼が笑い飛ばしたように、切嗣の願いは愚昧だ。
争いの根絶。人間とは、いや、そもそも生物とは、覇を競うようにできている。競うからこそ繁殖し、環境に適応し、進化し、生き延びている。もし争いの完全にない世界が実現するなら……という仮定は、そもそも成り立たない。なぜなら、生物の存在と争いの不在は同時に起こりえないからだ。仮定が成り立たないのだから、実現など絶対にありはしない。
全知全能、万能、という言葉は、時にパラドックスによって打ち砕かれる。
仮に全知全能の神が存在したとして、例えば「絶対に死なない人間を作れ」という命題は通らないのだ。全知全能であればそれが可能であるかのように見えるが、全知全能であれば、またその人間を殺すことも可能のはずだ。ここに矛盾が生まれる。
聖杯は、万能の願望器と呼ばれている。
しかし、万能はあり得ない。なぜなら、切嗣の願いは前提から成り立たないからだ。
確かに聖杯は、その機能は優秀なのだろう。しかし優秀止まりだ。それゆえ、聖杯は作中のように思考した。
不可能であれば、次善の策を弄すればいい。
切嗣の中にある切嗣の答えを使い、願いを実現する。
聖杯が切嗣に問いかけていた命題は、面白いものだった。
200人と300人のうち200人を見捨て、300人になる。
100人と200人のうち100人を見捨て、200人になる。
そのときどきでは確かに多を選んだはず。だが流れで見ると、結果的に小が生き残ってしまっている。
恐らく、こういう意味も含んでいるのだろう。例えば切嗣はナタリアを殺して多を助けたが、ここでナタリアを助けていた場合、空港は蜂に汚染されて大量の死者が出るだろうが、優秀な殺し屋であるナタリアが今後凶悪犯を次々と殺し、その凶悪犯が殺すはずだった人々が助かり、結果的にこっちの方が「死ぬ人数」が減った可能性があった。
このように、その時その時で多を選んでいると、結局は1人と2人にまで絞られる。そしてそこで切嗣の選択肢に残るのは、最も大切なアイリとイリヤ。舞弥でさえ、数の差により切り捨てられる。
聖杯は一番嫌らしい命題を課さなかった。それは、1人と1人になった場合。アイリとイリヤ、2人のうちどちらかを選べと言われたら、どうするか。
しかしそれを課す前に、切嗣は答えを出してしまった。
そんなの、選べるわけがない。
数で測れる問題を通り越している。
聖杯は知っていたのだろう。切嗣が、完全なる世界平和を除外すれば、だれを一番に思っているのかを。
世界平和は不可能。であれば聖杯が叶えるのは、二番手の願い。
だから聖杯は切嗣に、アイリとイリヤを取り戻せという願望を下せと言ったのだ。争いがなくなった先に切嗣が求めたのは、妻と子の安寧なのだから。
聖杯は結局言わなかったが、争いがなくならないのであれば、妻と子を選べと状況が強要してくることがあるだろう。
切嗣にとって、それでは駄目なのだ。
切嗣はここまで見せられて、ようやく聖杯が万能ではないことを知った。人の身で不可能なことをやるだけで、人の身で考えられる以上のことは考えない聖杯。
切嗣は、自らの願いが叶うべくもないことなど分かっていただろう。しかし聖杯は奇跡をもたらす。切嗣の考える奇跡とは、世の理まで捻じ曲げるような、人間の脳では思考も及ばない「争いの根絶が成り立つ世界」を聖杯が考え出すところまでを含んでいた。
しかし、聖杯はそこまでのものではなかった。
だから、切嗣はアイリとイリヤを殺したのだろう。
言わずもがな、彼女らは聖杯の見せる幻想だ。いろいろと理屈をこねて本物のアイリであると主張していたが、それは偽物が本物と同じディテールを持ったというだけで、幻想には違いない。
だが、殺した。幻想とはいえ、愛する妻と子を自らの手で殺すなど、切嗣がどのような気持ちでいたのかは想像を絶する。胸を射抜かれるような、辛く壮絶なシーンだった。
こんなものを見せるだけの、理を御するまでのものでもなかった聖杯など、切嗣にとってはただの杯にも劣る。
だからセイバーに、聖杯の破壊を命じたのだろう。二度も同じ命令を重ねて、令呪の威力を増してまで。
しかし。
セイバーが聖杯を破壊しうれたとして、奇跡を願って聖杯戦争に参加していた切嗣は、そのあとどうするつもりなのだろう。
感想
……上のやつは、本編を見て、本編から見えない部分までを勝手に解釈した上での内容なので、細部は間違っているかもですね。
でもまぁ、切嗣が聖杯の性能に絶望した、ということは間違っていないでしょう。
最終回直前。いやぁとんでもない盛り上がりでした。
あおきえい監督の絵コンテによる随所随所の演出がバッチリ効いていて超面白いです。
詳述は避けますが、切嗣 vs 綺礼はド迫力で本当に素晴らしかった。
特に聖杯に邪魔される直前のカメラワークはとてつもないですね。アニメでカメラがこのように回転するのを見るのはいつもすげぇ快感ですが、その中でも凝ってる凝ってる。こんなに凝ってるカメラワークは『アイドルマスター』の最終回ライブ以来でしょうか。
今回は本当にすげぇいいところで終わってくれましたが、まぁ本当に聖杯が破壊されちゃったらそこでゲーム終わりなので、たぶんアーチャーに阻止されるのでしょう。
最終対決は、セイバー vs アーチャー。ステイナイトのプロローグ?通りの展開です。
さて、アーチャーの器がでかすぎてセイバーの勝てる未来が見えないわけですが。どのような戦いを見せてくれるのか、本腰入れて楽しみにしたいと思います。作画も万全体勢で来るでしょう。
次回予告の声は、これは衛宮士郎か?
こちらも非常に気になります。
うーん、これはゼロ見終わったあと、もう一回ステイナイトを視聴しないといけないな。今だから分かるあれこれがありそうだ。
つぶやき
カラオケの話。だいぶ高音に声が届くようになって、裏声に関してはかなりの自信を持てるまでになった。練習の成果です。
でもビブラートがどうしても出ない。どうやったら声が震えるんだよ……


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