中二病でも恋がしたい! Episode XI「片翼の堕天使(フォーリン・エンジェル)」 感想!
もやもやもやもやぁっ!
最高で最悪な雰囲気
まさかの誤植でなければ、サブタイで2文節の間に「・・・」が入らなかったのは今回が初めて。
つまりは、今回は特別な回だということです。
なにが特別だったかというと、もちろん、ストーリー的な「落ち込み」
シリアス展開、という言葉も当てはまりますかね。でもシリアスと言うよりは、「落ち込み」と言った方が近いかなぁと思います。
シリアスというのは、コメディと対比して使われる言葉で、物語の質を表す言葉です。つまり、シリアスという言葉自体が面白さを決定するものではない。
そして多くの場合、シリアス展開に入っても面白さの度合いは保たれるか上がるかします。これは作り手がそう作っているからです(失敗すると下がりますが)。
今回のお話は、まさに面白さが落ち込んでいました。折れ線グラフにすると見事に急降下した感じです。シリアスでもありますが、どちらかというとこの落差が気になります。
落ち込んだとは言ったけど、では「見なければよかった」という類のつまらなさがあったかと言えば、そんなことはありません。
前回までと同じく、僕は大満足であります。いや、もやもやしたところで終わったから、満足という言葉は少し違うかも。でも「見てよかった」という類の感情が強いです。
そう、今回の落ち込みの原因は、この「もやもや感」です。
全編に渡って、それこそアバンからED直前まで、もうずっともやもやしていました。
前回、勇太に「眼帯、取れ」と言われ、その言葉に従った六花。
今回の凸守の台詞も総合して考えると、六花がいきなり中二病を卒業した理由は納得がいきます。
六花は自分の中二病設定を認めてくれる勇太に惚れたので、六花の中では「勇太=中二病設定の是非」という等式が成り立っているのでしょう。
そして恋とは不思議なもので、一度好きになってしまうと、最初は一部分に惚れたつもりなのに、全てが好きになってしまう。言い換えると、相手「そのもの」が優先順位の一番になる。
六花もきっとそうなったはずで、だから勇太が「眼帯、取れ」と中二病設定の方針を言うと、それに従った。
最初は拒絶反応を示したけど、でも必死に順応しようとした。ママの弁当を見つめながら。
だからこそ、パパの好きな歌を歌ったのでしょう。本人が生きている間に、その人が好きな歌をわざわざ特別な形で披露したりはしません。六花はわざわざ大衆に向かって歌った、つまり、六花は前回の時点でパパの死を受け入れた。私は中二病を卒業するぞ、という宣言のつもりだったのでしょう。
しかしこれは、勇太が言ったから従っただけのこと。己の心に従ったわけではない。
というわけで、今回は全編通して六花が無理をしている様子がこれでもかと強調され、勇太を迎えに行くシーン、教室で友達を作るシーン、などなどニヤニヤしてしまう可愛いシーンすら、「六花、これでいいのかな……」という気持ちが先行してしまって、シーンに感情移入できませんでした。
シーンとは関係ない、少し上の方で問題が宙ぶらりんになっている感覚。本質と映像が一致してくれない違和感。
結果、ずっともやもやしながら見続けるしかありませんでした。
もちろんこれは、わざとやっているのでしょう。
アバンであからさまに色彩が落とされていたのが分かりやすい演出です。この時点で、色がない、つまり虚無感が画面全体を支配して、Aパートで色彩がもとに戻ってからも、細かい演出でいちいち不安が増大します。
図書室での勇太と丹生谷のシーンなんか、ゾクッとすら来ました。「後悔してない?」と聞かれて、勇太は「なにが?」と即答します。そりゃもう、本当になにを聞かれているのかが分かっていないかのようなスピードでした。しかし表情は一度ストップしていて、でも背合わせの状態だったから丹生谷からは見えていない。この微かすぎる逡巡が、勇太の心を表しています。
六花の私服がフツーの可愛めに落ち着いているのも、なんだか落ち着きませんね。
お前はそうじゃないだろうと、言ってやりたい気持ちです。
六花の心は勇太次第
六花がパパのことを克服できたのは、恐らく依存先を勇太に変更したからでしょう。
全て上手く行っているように見えるのに六花も勇太ももやもやしているのは、これが原因。なにも解決していないのです。
もちろん、恋人同士になって、彼氏の求める自分になるというのは、それはそれでいいですし、可愛いのですが……。
勇太への依存度が増しすぎて、中二病設定をあっさり取り払ってしまうまでになっている。
しかしこれは、上でも書いたけど、己の心に従った結果ではない。
凸守の言ったことは、ある意味で正しいでしょう。
六花は勇太に、認めて欲しかっただけ。邪王真眼が最強であると。不可視境界線はあるのだと。
しかしこれでも、勇太への依存はそのままなわけで、むしろ勇太とパパとの微妙な間で揺れてしまうことにもなりかねません。
ただ、中二病であるだけではない。
ただ、現実を認めるだけではない。
新しい価値観を2人は求めるべきだと思うのですが、はてさて次の最終回、いったいどうなることやら……。
凸守について
いやぁ、前回が凸守のピークだったかも、みたいに思ってましたが、そんなことはなかったぜ。
六花もですが、勇太も自分の心に従っていないのがありありで、本当もう見ていられないのですが、凸守を責め立てるシーンは本当に辛いものがありました。
十花さんのやっていることと同じなんですよね。だってないんだから、現実を見なさいよ。確かにこれは突き崩す余地のない正論ですが、でも勇太はこの正論を自らの信ずる考え方として吸収したわけじゃなく、「責任」という甘い逃げ道へ逃げるための盾にしているにすぎません。
勇太もそれは分かっているようで、「俺が言いたいのはそんなことじゃない」と言っていましたが、でも凸守には相当酷いことを言ってしまいました。
いや、酷いことを言わせてしまいました。
「そんなの……分かってるですよ……」
上手く言葉にできません。でも、凸守にこんなことを言わせるなんて……。
すごく、胸が苦しくなりました。今すぐに画面の中へ行って、抱き締めてやりたいくらい。
でもそんなことはできないので、それは丹生谷に任せることにします。
いやぁ、凸守を部室から連れ出した時の丹生谷は素晴らしかった!
丹生谷は六花の家族の問題など、全てを知っているわけじゃないですが、しかし自分でそれを分かっているからこそ、傍観者に徹していますね。
しかしただ見ているだけじゃなくて、きちんと寄り添う優しさを持っている。
本当なら、六花の面倒すら見てやるところでしょう。でも丹生谷は、六花担当は勇太だと思っているのでそこまではしない。
凸守を抱きしめてあげる丹生谷は聖母に見えました。
丹生谷は慰める言葉を持ちません。だからただ抱き締め、感情を発散させてあげる。
丹生谷が泣かせてくれたから、凸守は六花を諦めずに駅まで突撃できたのでしょう。
しかしその結果、ズタボロに敗北してしまった凸守。
勇太側でも丹生谷側でもいいから、次回は凸守へのフォローも期待したいですね。


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