境界の彼方 #4「橙」 感想!
アニメ感想ブロガー泣かせな作品かもしれない。
感想
アニプレッションの盟友の1人が、「アニメは1話から最終話まで通して見ることを前提で作られている」「一方ドラマは、どの話数から見てもある程度は楽しめるように作られている」と言っていたのを思い出しました。
確かにドラマって、最近はほとんど見なくなったけど、家族が見てる横でたまに見てもなんとなく話が分かるんですよね。アニメで途中から見たことってほとんどないですが、たぶんワケワカメになるんじゃないかな。
この『境界の彼方』、恐らくこの性質が特に強いアニメなんだろうな、と今回思いました。
恐らく、というのは、まだ確信がないから。確信できるとしたら最終話でしょう。
もう少し具体的に言うと、「時間差で視聴者に意味が通じる」という感じ? ある事柄が登場して、その時点では意味不明なんだけど、少ししてからその意味が分かるようになる、みたいな。
そうは言っても、伊波桜の正体はどう考えても第3話のうちに明かしておくべき(ブロガーが軒並み公式サイトとかEDクレジットで正体を調べててちょっと笑ったw)で、「ああっそうだったのかー!」というカタルシスを生む作劇は、必ずしも上手くできているとは限らないんだけど。
少なくとも、「今」の時点で分からないからって、「このアニメはこの点が分からない! 不親切!」と騒ぎ立てるのは早すぎるのだろうと思います。どのアニメもそうなんだけど、繰り返すと、このアニメは特にこの性質が強い。
まだ分からないことが、1話先、2話先で分かるかもしれない。
1話ごとに感想を書いているアニメ感想ブロガーにとってはなかなか鬼門なアニメなんじゃないですかね。
例えば、僕は前回の感想記事でこんなことを書きました。
「散々練習台にしておいて逃げるのか」という点について秋人が突っ込んでたのにはちょっと笑った。まさに前回の疑問点だったからねw 結局未来はなんも答えなかったけどね。
未来は自分のことをわりとマジで忌むべき存在だと思っているので、相手の方から近づいて来られるのは「理解できない」んでしょう。怖いとか拒絶反応とかじゃなくて、理解できない。
そう考えると、秋人を練習台にしていた理由もなんとなく分かります。どうせ忌み嫌われ逃げられるのだから、自分が近づく分には構わない……、そういう心理なんでしょう。もちろん深層心理です。どうせ逃げられるのなら、それまでの間練習台にさせてもらおう。その結果嫌われても構わない。
結局は一方的な見方で、秋人のことをちっとも考えていないわけですね。「自分は忌むべき存在」という大前提があるから他の考え方ができない。自分のことを認めてくれる存在のことを考慮できない。
秋人の最後のセリフ、「分かってないのはどっちだ!」はこのことを言っているのでしょう。
第2話時点ではよく分からなかったことも、こんな風に考えることができる。
未来が秋人を最初にぶっ刺した件については今回もまた言及があり、そして未来は黙りこくっているので、↑の内容を考えるにはまだ少し足りませんが、いずれは回答がなされることでしょう。
僕を含めてアニメ感想ブロガーの多くは「妖夢や人を殺せないのになぜ秋人を刺せたの?」と批判していましたが、もしかしたらあとで土下座する時が来るかもしれない。
この第4話内でも面白いことがありました。
「僕に仲間がいるというのは間違っている」と秋人は言いました。
ちっとも理由を言わずに「分からず屋!」と続けてますから、「いやいやちゃんと言えよ!」っていう突っ込みをもらうことになるので決して上手い作劇とは言えませんが、虚ろな影を倒したあと、未来はこのセリフの意味を知ることになります。
瀕死の秋人のもとに到着したのは、博臣を始めとする異界士たち。
秋人は半妖だから、人間部分が瀕死になると妖怪部分が暴走する……。
博臣たちはこれを止めに、いや、殺しに来たのでした。
確かにこれは、仲間というのとは違う。
第2話で博臣が言っていた「協定」というのがなかなか的を射ている表現で、なにもしない間は手を出さないけど、もし暴走するようなら遠慮なく殺しますよ、と。
秋人にも博臣たちにも葛藤はない。すでに両者納得済みの、仲間とは言い難い距離を置いた関係。
しかも未来は、妖夢化した秋人が人間に見えなかったのでしょうね。
自分のことを忌み嫌うべき存在、人間らしい人間だとは思っていなかったせいか、妖夢秋人と自分を重ね合わせていました。
栗山さんと同じ。
いやむしろ、栗山一族の能力は制御できる分、秋人の方が酷いでしょう。普段は特に問題ないようだけども。
未来は一族最後の1人ということもあって、そして唯を殺してしまったことによって孤独感が強かったのでしょうね。
でも、似たような境遇の人がいる。
これはいい安心材料になったでしょう。食事シーンは実によかった。
秋人がイケメンすぎますね。わざと未来がしたのと同じ質問をして、似たような答えを返させる。策士だわぁ。
……ただまぁ、全体的にやっぱり分かりづらいw
一応ちゃんと考えられて、あとからみんな分かるように作られているのでしょうけど、これは根気よく付き合っていく必要があるなぁ。
目下一番気になっているのは秋人がどうやって現場まで駆け付けたのか。はぐらかしたということは答えがあるということで、前回のレンジでチンと関係があるのでしょうか。
博臣とのある種ドライな関係が明らかになったのは実によかった。博臣との、というよりはこの街にいる異界士たちとの、と言った方が近いかもですが、この件においては彩華さんと二ノ宮先生はモブ扱いでいいでしょう。クローズアップされるべきは秋人と博臣。
ただ、今回美月があまり活躍しなかったのがちょっと残念w
姉ちゃんと兄ちゃんが異界士として優秀なので、美月が戦った時にどれくらい強いのかがすごく気になってます。未来があたふたしてた妖夢をあっさり退治する場面があったので、妖夢を狩って生計を立てる異界士としてはそれなりなのだろうと分かるのですけどね。独自のネットワーク?も持ってるようだし。
アバンでは名瀬兄妹の面白おかしい一幕が見られましたね。あんなに嫌ってても必要なら「お願い、お兄ちゃん」なんて言っちゃう。それで博臣も許しちゃう。やべぇこの兄妹いいわぁ。
でも、ここでも少しドライさが見えましたね。秋人との協定を結んでいるのは、直接は博臣なのでしょう。美月はただの監視役。兄妹とはいえ、異界士としては1人の商売仲間、筋を通すところは通す……、このドライさは少しだけ心地よかったです。きれいごとだけでは進まない、という作品の姿勢が見えた気がします。
姉ちゃんとはさらにドライっぽいですけどね。絡みがまったく出てこない上に、なんか姉ちゃん人の稼ぎを横取りしやがったぞw
美月は、次回はたくさん出るー?
今回のエピソードでは出番があまりなかった分、次は期待したいね。さっそくヒロイン決戦もあるみたいw
スタッフのお話
もしかして今回、作画監督は植野千世子じゃね?
と思いながら見ていたのですが、本当にそうでした。いやぁびっくり。
と言っても、作画を見て判断したとかじゃなくて、ここまでのアクション回だったらもしかして?という推測ですけどね。クラナドアフターのゆきねぇ編で岡崎の骨格が変わるほどの喧嘩回がありましたが、この時の作監が植野千世子でした。妖夢秋人の迫力は凄まじかったし、この人マジで京アニ内でアクション担当なのだろうか。
植野千世子作監で、最初のエピソードの最終話、絵コンテ・演出には三好一郎……だと面白かったんですが、さすがに演出のクセがまったく違いました。
今回は武本康弘。
第2話も武本康弘でした。なるほど、アクションの質がよく似てます。特に未来が連続で斬りかかるところなんかほぼ同じアイディア。
気になったのは、静止画演出ですね。
未来が妖夢秋人に抱きついて止めたところ、静止画による演出がなされました。記憶が正しければ京アニでは初めてのこと。
と言っても、武本康弘はOP映像だとすでにこの静止画演出を使ってたりして(『ふもっふ』OPなど)、正しくは「本編で使ったのは初」となりますかね。実際、こういう虚構の要素が強い演出はOP・ED向けで、本編で使うのは異質だと言えます。
でもさすがベテラン、上手く決まってたな。
これからも新しい手法をどんどん取り入れて欲しいです。
ちなみに今のところ、演出陣は全員がベテラン勢なのですが、新人はどれくらい登板してくるのだろうか。
『Free!』が新人ばかりだったので、もしかしたら対比構造になるのかな、とちょっとその辺も注目してみたいと思ってます。


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