『新約とある魔術の禁書目録10』/鎌池和馬 感想!
最後のイラストが頭から離れない。
北欧の魔神編、決着。
……素晴らしかったっ!
いやぁ。
終わりましたねぇ。
もうこれで禁書シリーズ終わりでもいいや……。
……まぁ、駄目だけどw
思わずそう思ってしまうくらい、北欧の魔神編はとてつもなく面白い出来でした。
前回ラストのまさかの盛り上がりを裏切らず、最後まで突き抜けてくれた感じがします。もうね、他のヒロインがどうでもよくなってくるくらいにね、オティヌスが印象深いヒロインになってしまいましたよ……。
いきなり話は変わるけど、鎌池和馬10周年プロジェクト、5月分の発表はなんとお祝いコメントの追加だけでしたな。
なんでやねん! せめて3つくらいは景気よく発表しろや! ってちょっとピキピキしてしまいました。プロジェクトするのはいいけど、こう焦らされるとちょっと疲れるなー。
ねぇ、どうせアニメ3期やるんでしょ?
10番目が3期発表なんでしょ? そうなんでしょ?
って勝手に思ってるんだけど、さてどうなりますことやら。いや、こんなプロジェクト立ち上げておいて3期やらないって方がズコーなんだけどね。
さて、新約10巻の感想です。
オティヌスの物語
上中下巻構成となった今回の北欧の魔神編。
最後となる下巻は、オティヌスを救う物語でした。
文句なし!
……ってぇわけではないんだけど、僕の中では北欧の魔神編、これまでで最高の出来となりました。本当に素晴らしかったです。
その面白さの根幹を担っていたのは、やはりオティヌス。
前巻ラストから怒涛の勢いで正ヒロイン街道を突き進んだ彼女ですが……
本当に、最後のイラストが素晴らしすぎて頭から離れない……!
いえ、イラストこそがよかった、と言っているんではないんです。
最後の最後に、オティヌスが上条の腕に抱かれた。その情景に、ものすごく感動してしまったんです。
実は、「助けてやる」と言われた時から、すでに救われていたオティヌス。
そんなオティヌスであれば、これまでの道中、本当に楽しかったことでしょう。もちろん苦しいばかりの旅だったし、上条が敗北した時は無様に手を伸ばしたりもしたけど、それもこれも「自分の救いとなった」上条が側にいてくれたから。
彼はその言葉を裏切らず、最後の最後まで側にいてくれた。
今度は上条の方が報われる番だと、自らの身を滅ぼす選択をしたオティヌスですが……
そんな選択も突破してきた上条の腕に抱かれて、「理解者」の、大切な人の温もりを感じられて、本当に幸せだったことでしょう。
それはもう本当に文章からすごく伝わってきましたし、最後のイラストはそのシーンを盛り上げる最高の出来でした。
オティヌスは知らないことだけど、上条がこんな風に人を抱きしめたのは初めてのこと。
それくらい、上条にとっても、オティヌスはかけがえのない存在になっていたのでした。
……そしてまぁ、このシーンの時点ではオティヌス死んだように見えていたので、僕はもうなんというか、とてつもない喪失感に見舞われてしまったんですね。
最高に素晴らしいシーンだったし、上条に報いようと死を選んだオティヌスの選択もとても優しいものだと思うんだけど、その結果本当に消えてしまったのが、ものすごく悲しくなってしまって。
本人がとても満足していたのは間違いないはずなのに……。
この気持ちはまさに上条も感じていて、このセリフに集約されていました。
「それでも、あの笑顔を違った形で見てみたかった。それだけだったのに」
そうなんですよね……。
あんな笑顔ができるんだったら、今後の人生をいくらでも楽しいものにできただろうに。
それをすぐ近くで見ることができたなら、どれだけよかったことか……。
……ってな具合にズゥゥゥンと沈んでいると、なんかオティヌスちゃんが15cmになって再登場w
これはもうどうしていいか分からなかったw
いやね、いいんですよ。こんな感じの明るい結末がこの作品に似つかわしい。
かまちーもあとがきで「ハッピーエンドにすると決めてた」と言ってたけど、僕も10巻を開く前から、この巻はハッピーエンドで終わって欲しいと凄まじく願っていましたので、オティヌスもそばに居続ける結末で、本当によかったと思います。
人間サイズのまま帰還してたら間違いなくアメリカの牢屋行きだっただけに、15cm化は「上手いな」とも思いました。
だけど……ねぇ……いくらなんでも小さすぎね……?w
だって!
だって15cmだったらさ!
もう抱きしめあうこともできないじゃん!
僕はね! また見たいんだよ! というかもっと見たいんだよ! 上条とオティヌスのラブラブを!
……つってもまぁ、オティヌスが人間サイズで帰還してて、ついでに牢屋行きも免れる展開になっていたのだとしても、かまちーはもう一度抱きしめあうシーンなんて書かないでしょうけどね。そういう作家です。
あの一瞬、一度だけの抱擁だからこそ、価値があるんです。
というわけでまぁ、今まで暗躍していた意味でのグレムリン編は終わったわけで、次回からなにすんのかさっぱり見当もつかないんだけど、オティヌスが上条家の愉快な住人に加わりそうでよかったよかった。
上条の戦い
今回は本当に全員が敵で、上条の連戦もこの巻の大事な要素なんだけど、これについてはまぁ、面白かったけど「オティヌスのお話の影に隠れたなぁ」という感じ?
間違いなく面白いはずなんだけど、結末ばかり気になっちゃってね。いい意味で「早く! オティヌスどうなるの!? ねぇどうなるの!?」って気持ちだったので、バトル展開は少々長く感じちゃったところもあります。
そしてちょっとした問題は、上条の連戦としてはVSアクセラレータが一番面白かったということ……w
まぁこれは僕の感想でしかないんだけど、「最初の敵がいきなりコイツ」ってのが本当に衝撃的で、ワクワクして、バトルも面白くて、んで結局この戦いが一番だったという。
マジでやばい敵ってのは後ろの方にこそ控えていたし、一番無理ゲーな敵は神裂4人衆で、上条は3度敗北してるんだけど、「うわああああやべえええええ」感が一番強かったのはなぜかアクセラレータだったなぁ。
アクセラレータ自身のキャラ、そして上条との関係性がそう感じさせたのかも。
そしてこの巻、最初はもう本当に完全に孤軍奮闘の状況にあったんだけど、最初の敵であるアクセラレータが上条の味方となったことで、巻の方向性が見える仕様になってましたね。
いや、「味方になった」というのはさすがに少し言いすぎでしょうけど、手を抜いていたということは「敵でもなかった」ということでしょう。
たぶん、わざと負けるつもりだったというよりは、上条の選択に賭けてみたくなったんじゃないですかね。
デンマークの雪原に投下されるまでは、「マジで何やってンだアイツ……」みたいに思ってたんだと思うけど、上条の話を聞いて、上条の表情を見て、別にいつもと変わらないことに気づいたはず。
だけど上条の言っていることは意味不明なので、無条件に協力することもできなくて、ならば最後に分かりやすく・ありったけのド派手な攻撃を加えて賭けをした、みたいな。
この攻撃で上条が潰れるようなら、ついでにオティヌスも殺す。
でもこの攻撃が跳ね返されたら、まぁそれもいいか、それくらいの気持ちがあるならどうにかしてくれンだろ。
みたいな。
あとはまぁ、総体が言ったような理由ももちろんあったでしょうね。
とにかく、そんなアクセラレータとの激突が一番面白かったのでした。
もちろんその後のどんな戦いもよく考えられてて、面白かったですけどね。
そして進撃していくにつれて、最初は2人だけだった上条とオティヌスだけど、だんだんと味方を増やしていったんですよね。
アニェーゼ。
神裂。
ロベルト。
美琴。
インデックス。
バードウェイ。
オッレルス。……オッレルスは、少し違うかな?
これだけの仲間が、一度は上条と拳を交えながらも、彼に協力することを決めた。
これってすごいことだと思います。
それだけ、今まで上条が積み上げてきたものが大きいということだし、今の上条の姿がみんなに感銘を与えるものだったということ。
……まぁ、あとは、本当にずっと孤軍だったら上条1人でこんなの突破できるわけないですからねw 9巻時点では「上条さん過去最高にかっけぇけど、どうやってオティヌス守り切るん……?」って不思議だったのですが、なるほどこういう感じになったわけか。
不満ってわけではないですよ。
ただまぁ、唯一「最初から上条に協力する気満々だった」インデックス(この場合はバードウェイは「ついで」になるかな)だけど、そのメインヒロインっぷりとは裏腹にセリフがめっちゃ少なかったなぁと……。
バードウェイの方がよく喋ってたね、全体的に。まぁ僕バードウェイも大好きだからいいんですけどね。
そして、上条の戦いの中で、とても好きなシーンがあるんです。
それは、疲れて寝てしまったオティヌスを起こさないようにそのままにして、1人で拳を握ってロシア勢に立ち向かって行ったシーン。
……もうね。その前にもすでに上条はオティヌスの盾となって戦っていたんだけど、この「守るべきものを再確認する」シーンがね、とてつもなく心に響いたんです。
オティヌスのそばに立ててよかったと、後悔ひとつない上条がかっこよくて。
そんな上条に守ってもらえるオティヌスが、すごく愛おしくて。
禁書シリーズを追い駆けててよかったと、心から思えました。
目が覚めたら上条がいなかったオティヌスは、めっちゃ心配したんでしょうね。しばらく気づかなかったということは、上条がそばにいると思って、つまりかなり安心して眠り込んでいたからで。
再会時にはなんでもない風だったけど、上条の無事を見てものすごく嬉しかったに違いない。
そしてその後のシーンも、戦いそのものよりもオティヌス関連のシーンがいちいち印象に強いわけですよ。
それまでは表面上は偉そうな様子を保っていたオティヌスだけど、シルビアに完全敗北して瀕死の上条を見て、自身も殺されかけているのに、上条の方へ手を伸ばすんですよね。
ブリュンヒルドに肩を踏まれてもなお手を伸ばし、上条の贖罪を必死に願う様子は、かつて世界を破壊した魔神としては限りなく滑稽。
でも、もうオティヌスは魔神なんかじゃない。
1人の少年のそばにいたいと願う、ただの恋い焦がれる少女になっていたのでした。
その姿は滑稽で、無様で、威厳も誇りもないけど、とても美しい。
こんなにも必死に手を伸ばせる瞬間がオティヌスにも訪れたのだと思うと、すごく感慨深かったです。
そして、そのあと瀕死の上条の肩を支えながらのシーンにて。
「本当に、私は、どんな夢だって追っていいのか……?」
その表情は……。
もうね。ノックダウンってもんじゃないよね。オティヌスちゃんが幸せにならなかったら僕は死ぬ!とか思っちゃったね(大袈裟
最後に
他にも面白いところはいっぱいあったよ?
美琴とか、神裂とか、ミョルニルちゃんとか、トールとか、そして大統領たちの選択とか。
でも、今回はどうしてもオティヌスだったね。一ヶ月経ったらガチでオティヌス関連しか覚えてなさそうで怖いw
というわけで、もっといろいろ語りたいんだけど、この辺で終わっておくことにします。もうだいぶオティヌスについて吐き出して満足してしまったのでね。
まだシリーズは続くわけだけど、今のところ、北欧の魔神編を超えるストーリーが出てくるようには思えないw
次はどんな話になるんだろうなぁ。
どう呼べばいいのか困るけど、とにかく新約スタートから始まったと言える「グレムリン編」が今回で終わったことになって、次の大きな流れが始まるはずなんだけどね。
第6位もついに動き出しそうな感じだし、次は科学の話かな?
どんな話になろうと、とにかく楽しみです。
……ただその楽しみの半分以上が、オティヌスを絡めたドタバタ劇が見たい、ってのが正直なところなんだけどねw
- 関連記事
-
- 『新約とある魔術の禁書目録10』/鎌池和馬 感想! (2014/05/20)
- 『新約とある魔術の禁書目録9』/鎌池和馬 感想! (2014/04/12)
- 『新約とある魔術の禁書目録7/8』/鎌池和馬 感想! (2014/01/16)
- 『新約とある魔術の禁書目録6』/鎌池和馬 感想! (2013/01/24)
- 『新約とある魔術の禁書目録5』/鎌池和馬 感想! (2012/10/17)